枚方市障害福祉サービス事業者連絡会の2023年度総会の「事業計画」における「障害者を取り巻く現状と連絡会の役割」を紹介します。
【障害者を取り巻く現状と連絡会の役割】
昨年8月、スイス・ジュネーブにおいて障害者権利条約の対日審査(国連障害者権利委員会と日本政府による建設的対話)が行われ、9月には総括所見が公表されました。脱施設・病院やインクルーシブ教育の推進をはじめ、日本国内でさまざまな改革を行うことが求められています。
一方、東京の精神科病院(滝山病院)における患者虐待事件や北海道のグループホーム(GH)における不妊処置問題をはじめ、総括所見の公表以降も、障害者の権利侵害をめぐる報道は後を絶ちません。また、大阪市のマンション内GH追い出し裁判や優生保護法裁判など、総括所見を踏まえた障害者の権利をめぐる今後の動向が注目されます。
枚方市における障害福祉サービス関連制度の動向については、昨年7月から「年齢要件・介護保険資格要件に関わらない通院における同行援護の適用」と「社会参加の促進と利便性向上の観点から、外出先から医療機関への移動等に移動支援の適用」が行われ、今年4月からは、保護者の一時的な傷病等や妊娠・出産期を理由とする短期的な通学支援の利用が認められました。また、「枚方市成年後見制度利用促進基本計画」に基づく地域連携支援が取り組まれています。
今後の動向としては、枚方市社会福祉審議会 障害福祉専門分科会において、今年度中の整備目標である地域生活支援拠点の整備等にかかるワーキンググループの設置が決まり、連絡会としても、深刻化する人材不足の課題も含めて、地域移行・地域生活支援の推進に向け、議論に集中していきたいと思います。
また、今年度中に、枚方市障害福祉計画(第7期)、枚方市障害児福祉計画(第3期)の策定及び枚方市障害者計画(第4次)改訂が行われます。枚方市社会福祉審議会 障害福祉専門分科会での審議や7月に予定されている障害当事者や事業者に向けたアンケートへの回答をとおして、連絡会としても、より良い障害福祉施策の推進に協力していきたいと思いますので、会員の皆様には積極的なご意見・ご協力をお願いいたします。
2003年の支援費制度導入から20年が経過しました。多様なサービス体系が構築され、多様な事業者が参入してきました。近年はM&A(企業の合併・買収)が活性化し、事業拡大による「経営基盤の安定」や「効率化」が重視され優遇される制度が強化される一方、地域でのつながりを基礎とした小規模事業者は厳しい環境に置かれているという指摘が多くみられます。
障害当事者と支援者が、地域で共に生きるための手段として事業を運営するという考え方、スタイルというよりは、利益や事業拡大を重視する方向性を求められる社会環境の中で、「障害者が地域で生きる権利」「当事者の主体性・自己決定の尊重」「共生社会の推進」という基本的な事柄を確認していくことが、あらためて私たちに問われていると思います。
他方、自治体行政においても、措置制度下と比較して業務量は増加し業務内容は煩雑化され、また、国が基準化したシステムの実施を求められ、当事者や支援者と地域の課題を共有しながら自治体独自の制度づくり・地域づくりに向かうことが困難な状況に置かれていると感じます。
こうした状況のなか、枚方市は今年4月から「障害福祉サービス事業所無料職業紹介事業」を開始し、グループホームの世話人不足の解消に向けて、マッチングやあっせん行為という形で行政が関与する仕組みがつくられました。さまざまな場面で人材不足が課題となっていますが、当事者・事業者・行政が連携して地域の具体的な課題に誠実に向き合い、取り組みを積み重ねることが重要であると考えます。
連絡会は、新たな取り組みとして昨年12月から、障害者に関連する報道資料について、会員限定のメール配信を始めました。毎月さまざまな報道がありますが、日々の事業所運営に追われ、自主的には収集・把握が困難な場合もあると思います。障害者を取り巻く社会状況を認識することで、サービスの質の確保・向上にもつながると考えます。
今年度は、会員の皆様と役員の意見交換をより意識しながら、さまざまなテーマで研修や情報提供の機会をつくり、事業者と行政の連携を強めていきたいと思います。ご理解・ご協力をお願い申し上げます。
2023年5月31日
枚方市障害福祉サービス事業者連絡会
会長 安田 雄太郎
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